Summer Crops 夏の津田農園にて

「人のいのちを確かに守り育てうる食べものの向こうには、必ず信頼に足る人物が存在している」(辰巳芳子「食の位置づけ(東京書籍)」より)

毎日食べられる料理、小さな子どもからおじいさんおばあさんにまで「おいしい」と思ってもらえる料理ー。そんな食事を提供したいと思うエピエリのお店では、本当においしいを食材使うことがとても重要です。それは食べやすくてシンプルな味付けの料理こそ、食材がよくないと味にならないからです。だからこそ、エピエリでは野菜もお肉も卵も魚も、生産者さんの顔がきちんと見える仕入れを大事にします。

まだ蝉の声が賑やかな8月下旬、エピエリのチーフシェフ・松浦亜季が山梨県・清里高原にあるエピエリのオーガニック自社農園(津田農園)へ夏野菜の収穫に訪れました。

summer-2.jpeg

水彩画のような美しい青空の下、降り注ぐ光を全身に受け、眩しいほどに輝く野菜たち。「野菜が喜んでいるー」津田農園で育つ野菜たちを見ると、そう思わずにはいられないほど、その生き生きとした表情や艶やかな姿に驚きます。

ここの野菜たちは、澄んだ空気と太陽の恵み、そして高原地帯ならではの朝露をめいっぱい体に取り込んで育ちます。そう、この津田農園では水やりを一切行わず、毎朝の濃霧が朝露となり作物に潤いを与えるのです。

さあ、木陰にトラックを止めて今日の収穫を始めましょう。

エピエリの野菜を作ってくださっている津田ケンさん。夏は毎朝5時半頃から農作業を始めます。

まずはジャガイモやビーツの掘り起こしから。ずっと土の中に眠っていた野菜たちをびっくりさせないよう、ゆっくり丁寧に。

「ビーツはゆっくりローストしてからピューレに。そうすると鮮やかな色がそのままで仕上がりもきれい」黙々と収穫を進めながらも、しばし二人はおいしい食べ方について盛り上がります。

野菜の育つ姿、それを育てる姿を見るからこそ、シェフ・亜季はお皿の上で“最高のお嫁だし”をしてあげたいと思うのです。

summer-6.jpeg

「自分の手で面倒を見れる範囲でつくります」そう話すケンさんの野菜は、ひとつひとつ、ひと粒ひと粒が、愛情を受けて育っていることを示すかのように美しく、強い生命力を感じさせます。農薬を使わない代わりに、ケンさんは手と時間と心を使います。

summer-7.jpg

どこか宝石のようにも見える津田農園のトマト。まだ青いですが、これはピクルス用に早穫りします。「青いトマトはそのまま食べると少しえぐみがあるけれど、ピクルスにするとそれが美味しさに変わるんだよ」シェフ・亜季が教えてくれました。

かご一杯のトマト。おいしいピクルスができますように。

気がつけばもう12時。そろそろお昼の時間です。

summer-10.jpeg

「いただきます」少し手を置いて、ケンさんの奥さんが作ってくれたお昼ご飯を頂きます。勿論おかずは全て農場の野菜たち。畑で穫れた野菜を食べて、その力で午後も野菜を収穫します。

青空の下で頂く自家製赤じそジュースの爽やかなこと。シェフ・亜季もほっと一息。さあ、午後はお豆とトウモロコシの収穫が待っています。

長い長い、モロッコインゲンのトンネル。「もうそろそろ穫ってください」と語りかけるかのように、サワサワと風に揺れるお豆たち。その囁きを聞き逃さないように、ひとつひとつ穫ってゆきます。

お豆の収穫が終わる頃、少しずつ夕方の風が吹き始めました。トウモロコシを育ててくれている島崎さんが、シエスタを終えてそろそろやって来る頃です。

日々自然と向き合い、絶え間ない努力と忍耐を必要とする農業。トウモロコシ畑の中追う島崎さんの背中が、ここで育つコーンが驚くほど甘い理由を物語ります。

最後はフェンネルやハーブの収穫です。畑でもキッチンでも、最後の仕上げはよい香りと一緒に。

今日はこれでおしまい、トラックに積みきれないほど沢山の野菜を収穫しました。

今夜も東京に戻り、清里の太陽のほてりが残るうちにエピエリのお店に届けます。

津田農園での眩しい夏の1日は、こんな風に過ぎてゆきました。

ひと夏の記憶は野菜のうまみに凝縮され、早速明日からお皿の上にのぼるのです。

epi etriz