Interview with Taku Kondo (Habanero Man)

The Color of a Hot and Spicy Life
ホットソース メローハバネロの地を訪ねて

大きな鍋の中の鮮やかなハバネロ。熱と時間、そして創意を絶やさずに、じっくり根気よく煮詰めていく。野菜やスパイス、塩やお酢という絵の具を使って、調味をする。自分の思い描く色彩と味の世界を表現していく。やがて、眩しい黄金色のソースが出来上がっていく。「収穫の季節、畑で何千もの黄色いハバネロの実が夕陽をうけて金色に輝く光景は圧倒的です」篠山の太陽の下で過ごした約半年間の日々—、メローハバネロの美しい色が映し出すのは、ハバネロとハバネロマン・近藤卓さんのそんな鮮やかな物語。

言うまでもなく、ホットソースであるメローハバネロは辛いもの。けれどもその辛さと同じだけ、柔らかく優しい何かがそこにある。「畑に立ってハバネロの実を割ったとき、それはもはや唐辛子や野菜の香りではありません。例えると、甘くて可憐な花の芳香でしょうか」そう話すのは、メローハバネロの生みの親、そしてターンムファーム代表の近藤さん。唐辛子の王者・ハバネロを育てる近藤さん自身にも、灼熱の太陽というよりは、柔らかい日だまりの様な空気が漂います。

一方、近藤さんのメローハバネロ作りに対する情熱は、 ハバネロの辛さに負けないHOT(熱い、辛い)なもの。これまで近藤さんの人生には、教科書的なものはありませんでした。フードトラックの存在すら知られていなかった15年前にカレーワゴンのお店をスタートし、13年前には東京から石垣島に移住。そこで友人からハバネロの実をひとつ受け取ってから今現在まで、全てが試行錯誤、そして自然からその回答を待つことを繰り返してきたといいます。けれどもそれが「常に誰もやったことのないことしてきた近藤さんらしいスタイルなのでしょう。

ハバネロの栽培自体が、日本ではまだそれほど多くはなく、ましてや、2002年に初めて栽培を始めた当時はハバネロ栽培に関する専門書も情報も無いに等しかったといいます。それでも考えては挑戦し、ひと粒の実から1800株ものハバネロの苗を育て、今の大きな畑に至るのです。「芳醇な甘さの後にやってくる、突き抜ける辛さ—。こんなにも美味しい唐辛子があったなんて」ハバネロの実を初めて口にした時、近藤さんの心は震えたといいます。その感動体験が数えきれない苦労を燃料に変える力となり、やがてホットソース「メローハバネロ」が生まれました。

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3 反 (100m×30m)のハバネロ畑を毎年1.5反ずつ使うことで、畑を休ませる。そして、その間に育った雑草や植物を全て土へと抄き込み、無駄なく栄養とする。季節の移ろいや自然の循環に目をやり耳を傾ける中で、畑の耕し方も、種を蒔く時期も、雨や太陽との付き合い方も全て経験から学んだといいます。ターンムファームが完全無農薬栽培であるのは、近藤さんのそんな生き方の中で、自然と形成されていったものなのでしょう。兵庫県篠山市という場所はハバネロの栽培に適しているのですか、との質問には「わかりませんが、立派な実が沢山できるのでそれが自然からのこたえだと思います」という言葉が返ってきました。

とはいっても、太陽を好むハバネロは、雨が多いとその年の収穫量は減ってしまいます。そしてとても寒さに弱いのです。毎年4月の苗の発芽はその年の運命をきめるほど重要なもので、近藤さんはハバネロの苗が発芽するまで、全く心が落ち着かないといいます。25度を2週間キープしなければ発芽しないハバネロは、畑で一緒に育てているハラペーニョやトマティージョといった作物に比べても発芽が遅くデリケート。「10日目ぐらいからドキドキします。芽が出たときは、もう胸がいっぱい。」

まるで人間のようにストレスを受けるほどピリピリ辛くなるというハバネロは、乾きに耐えながら過ごした8月の後、ちょうど収穫が始まる9月に穫れるものが最も辛いのだそう。「10月後半には、僕が一番好きなかっこいいシェイプのハバネロが穫れます」収穫時期によってその辛さと味、そして形を変えるハバネロをうまくミックスしてそれぞれのソースに仕立て上げます。メローハバネロシリーズの中でも最も辛い「ヘブン」は、収穫初期の実からつくるのだといいます。「辛いだけのホットソースを作りたいわけではない」と話す近藤さんの言葉のとおり、メローハバネロのソースは、甘さ、酸っぱさ、そして辛さが、口に入れた瞬間から物語のように静かな移ろいを描くよう。南国の太陽の下、胸いっぱいに空気を吸い込んだときのようなオレンジ色の香りと甘み、水面の輝きの様な眩い酸味、そしてハバネロの辛みが、波が打ち寄せるように静かにやってくるのです。そして「ヘブン」のような辛さの強いソースであっても、その辛さは決して不自然に長引いたりはしません。「ハバネロのもつ辛さは、引き際がいい」近藤さんはそう話します。

11月後半、篠山の地に霜が降り始め、冬がやってくると同時にハバネロの収穫も終了です。「冬は脳みそを蓄えるとき」という近藤さんは、冬を越すための薪を集めながらアイディアを生み出していくのです。この秋完成をむかえる「シャトー・ハバネロ」も、そんな脳を耕す作業の中で生まれたもの。ぶどうの栽培からワイン作りと加工までを行い、時には訪問者の宿泊も受け入れるシャトー。そんなシャトーのような場所が、ここターンムファームにもあったらどうだろう―?実際、ターンムファームの目の前にはハバネロ畑が広がり、ソース作りをおこなうアトリエはその畑を見つめる場所にあります。そして、国内・海外からの訪問者たちがターンムファームに滞在することも少なくありません。ぶどうの木がハバネロになったそんな「シャトー」を、近藤さんは全て自分で作り始め、今秋ついにオープンを迎えます。ハバネロを象ったステンドグラス、シャンデリア、階段、バーカウンター、皆で並んで料理が出来るキッチン―。ハバネロの発芽から栽培、収穫、ソース作り、瓶詰め、そして発送まで全て自分で行うように、シャトーも全て自分の手で作りました。「Farming + Cooking + Designing + LifeStyle = Mellow Habanero だと思っています」そう話す近藤さんにとって、シャトーはメローハバネロを作る中で生まれたライフスタイルの形であり、ホットソース作りの工程の1つと変わりないのでしょう。「海外の農家仲間がこっちにきて、僕があっちにいって、お互いの畑や生活を一定期間交換したりもしてみたい」シャトーの誕生を機に、メローハバネロというひとつの作品に、きっとまた新たなスパイスが加わっていくのでしょうか。

近藤さんにとって、ハバネロの栽培も、料理をすることも、暮らしを作っていくことも、全て変わりのない創造的な作業であり、それらが最終的に「メローハバネロ」というホットソースに凝縮されます。「僕が作りたいのは、単独でおいしいソースではなく、食べものと一緒になって全体がおいしくなるソースです。そう、ソース自体が個性的で既に出来上がってしまっているものではなく、食べる人のお皿の上で完成するホットソース。」何かを無理に押し付けて好きに色付けてしまうのではなく、あくまでもそこにあるものの良さを引き出すこと。メローハバネロとは、日々自然に向き合っては耳を傾け、無から有を創り出す近藤さんが考える「創造性」に対するひとつのこたえなのでしょう。人生の楽しさとは、誰かに与えられたものをそのまま享受することではなく、それを自らがどうやって昇華させていくことができるのかを考える、その余白にあります。だからこそメローハバネロも、食べる人の想像力/創造力をかき立て、素材のうまみを引き出していくことができるのです。

「楽しんでいれば、自ずと大事なものに近づいていく」それがハバネロマン・近藤さんのフィロソフィー。それはメローハバネロ作りにも、日々の暮らし方にも、生き方そのものにもいえると近藤さんは言います。情熱をもって楽しんで作っていれば、自然と美味しいソースが出来上がる。楽しんで暮らしていれば、日々は自然と創造的になる。「食べても食べても何時間か後にはお腹がすく。だったら1日3回の食事を楽しくすれば人生もっと楽しい。3回も楽しむチャンスがあるなんて、とてもラッキーなこと。その1回1回の食事を楽しくするのがメローハバネロだったら嬉しいね」

メローハバネロとは、楽しい人生を描くための1つのスパイシーな絵の具なのです。

◆◆メローハバネロが味わえる・買える エピエリのお店◆◆

Kojimachi Cafe( お食事の際にお楽しみいただけます)
Suke6 Diner(お食事の際にお楽しみいただけます)
Chili Parlor 9(各テーブルに備え付けています)
Factory(物販コーナーにて販売中です)

Mellow Habanero  オフィシャルウェブサイト
 www.mellowhabanero.com

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