真夏のとある日の旅行先で

 


梅雨が明けてから初霜が下りる少し前までの間、エピエリのレストランには、清里の自社農園からたくさんの夏野菜が届けられます。エピエリの根底となっているビジョン、そして「良いをたべる」というコンセプトを、その野菜が育つ場所を実際に訪れることで体感する、これがエグゼクティブシェフ松浦亜季が今回提案したテーマ。

今年は東京のお店を離れ、社員一同で清里にある自社農園へお出かけし、「Eat Good」とは何かを体験してきました。「私たちが日々、お客様に提供している野菜を育くむ場所、それをスタッフたちに見て欲しかったのです。」亜季さんはそう言います。


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5月〜10月の間、山梨県北杜市にある清里高原はまるで「ようこそ」と私たちを歓迎しているかのように山々も大地も緑色に包まれます。今年は梅雨に雨が少なく、野菜がどうなるのかと心配したこともありましたが、なんとか無事に迎えられた夏野菜の収穫時期。

8月になるとまるで太陽のお祭りのように畑の周りに咲き乱れる向日葵にはまだ少し早いけれど、いつも東京で働きながら生活しているみんなが、草の上で遊び、食べて飲んで、農園で土に触れ、毎日お店で調理している野菜を自分達の手で収穫することは、自分達の思いをお客様に伝えるためにとても大切な事です。

蒸し暑く雨の降る真夏の日の早朝、皇居から目と鼻の先の麹町カフェに集合したエピエリのスタッフ達。シェフにバーテンダー、そしてホールスタッフ、その数おおよそ30名。東京から西の山々に向かって4時間、清里高原に向ってバスは進みます。

バスに乗り込んだ一行を待っていたのは嬉しいサプライズ。FACTORYのパン職人たちが日の出前に焼き上げたクロワッサンとクロックムッシュが朝食にふるまわれます。お店では朝いちばんのクロワッサンは一番人気、普段はお客様しか味わえない焼き立てを今日はみんなで食べてしまおうというわけです。

普段は麹町、目黒、市ヶ谷、浅草とそれぞれの店舗で働くスタッフが一堂に会するのは年に数度しかありません。バス車内はさながら同窓会の雰囲気。車窓に見える風景は高層ビルから、やがて高い空と緑の山へと変わってきます。

バスは一路、日本の「中心」を目指します。

南アルプスに到着。バスを降りるとなんとも心地よい気候。立ち並ぶ古風な魅力に溢れるペンションを横目に丘陵地帯を歩く、歩く。たどり着いたあずまやでは社長のせいさんとシェフの亜季さん夫婦、そして退職後、清里で農園の管理をしている亜季さんの両親、ケンさんとトモコさんが私たちの到着を待っていました。

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この数ヶ月で育てたズッキーニ、きゅうり、ピーマン、ナス、ミニトマト、インゲン豆にビーツ、色々なハーブ類、ケンさんに案内してもらってみんなで畑を見て回ります。そのあとは収穫作業。ズッキーニを刈り取り、ビーツやカブを抜く。また一方では、つるに覆われた格子から豆やトマト、きゅうりを取ります。1時間足らずでトラックの荷台いっぱいの野菜を収穫し、いざバーベキューの始まりです。

バーベキューでは亜季さんとお手伝いで先乗りしていたシェフたちが山梨の食材をふんだんに使ってとっておきのお料理をふるまいます。甲州ワインビーフのステーキに富士さくらポークのブロシェット、地鶏とパイナップルのグリルにはミントのサルサを、トルコ料理“お坊さんの気絶”も用意されました。玉ねぎとニンニク、トマトをナスに詰めたものを、オリーブオイルでじっくり煮込み、仕上げにヨーグルトをかけたこの料理は今年の夏の亜季さんのお気に入り。「畑の野菜だけでできちゃうの。種をまくところから見ていてすぐそこでとれた野菜が今、目の前のお皿にのって私たちのごちそうになっている。私が考える良い食べ物は派手なものである必要はないし、高価なものである必要もないんです。斬新なものや革新的なものは今私たちが作らなくてもいい。食材、そしてそれを大事に育てた生産者、そこから私たちの距離は短い方がいい、普通で素敵で美味しくて毎日食べられる。そういう料理をみんなに食べさせたい。食べ物は人を育み、満たしてくれ、食べた人はそれに感謝して明日も頑張れる。」

若手シェフたちもお手伝いしてハーブを細かく刻み、皮をむいたトウモロコシと混ぜ合わせて、甲州ワインビーフのステーキとシイタケと畑のミニトマトの串焼きの付け合わせになるサルサ風ソースを作っています。

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セイさんからは、良い食材で作られた良い食べ物の素朴さや、ケンさんとトモコさんのホスピタリティについてのちょっとしたスピーチ。彼らが春から秋、一年のほとんどを通じてエピエリで使われる野菜の多くを提供してくれていることへの感謝。乾杯に続いては、日ごろ頑張っているスタッフたちへの感謝の言葉。一緒に働けることがかけがえのない喜びであること、そしてエピエリの驚異的な成長についてきてくれてありがとう、と。

かしこまった話はここまで。ワイン好きのセイさんがチョイスしてきたのは、彼自身お気に入りの新進気鋭のワイン。

亜季さんは近くの畑で積んできたばかりの新鮮なベリーとフルーツを使ったサングリアも用意していました。夏イチゴにブルーベリー、ラズベリーに桃。山梨は日本に誇るフルーツの産地。国内最大の収穫量を誇るぶどうに桃、さくらんぼ、イチゴ、ブルーベリーやスモモの栽培でも広く知られています。

みんなが食べて飲んで、芝生でフリスビーやサッカーを楽しみ、昼寝をし、思い思いに楽しみます。その間に炭火の上では農園野菜と豆のサマー・チリと直径50センチの特大のパエリアの準備をします。今摘み取ったばかりの新鮮なインゲンを飾ってエピエリのバーベキューには欠かせないこのパエリアの完成です。食後のデザートの焼きマシュマロも忘れません。

11年前、たった3人で小さなコーヒースタンドからスタートしたエピエリは、60人以上のスタッフと6軒のレストランを展開するまでに成長しています。私達が食材やそれを育む大地、手塩にかけて食材を育ててくれる人々に対する感謝を忘れた時にもたげる「良いを食べる」という考え方。亜季とセイは「良い食べ物は派手なものである必要も、高価なものである必要もない」という彼らの哲学をこれからもその活動を通じて実践していきます。

 
epi etriz